Making Process
筆旅ができるまで
『筆旅』の制作は、すべての作業が日本国内で行われています。
スケッチ、着彩、印刷、製作、それぞれのこだわりをぜひご覧ください。
空気感を閉じ込める「スケッチ」
作家・花城祐子先生が直接現場を訪れて、スケッチをします。時間のかかる作業ですが、『筆旅』から旅の雰囲気を感じていただけるようにとの思いから、この方法をとっています。
歩くのと同じようなペースでスケッチを行うのが、花城先生流。先生自身が感動を覚えた場所・シーンを瞬時に切り取ることで、臨場感あふれる絵と文章ができあがります。『筆旅』を開くとまるでその現場の空気感を感じるような、そんな感覚がお届けできたらと思っています。
「着彩」では、“印象”を色に
着彩時は、実物の色を忠実に再現するというよりも、現場で感じた“印象”をもとに色をつけていきます。自宅で色を加える際には、金色などを使って華やかさをプラスすることも。先生が感じた“印象”をもとにした着彩が、あたたかみのある世界観をつくりだします。
職人技を生かした「表紙デザイン」
表紙デザインのベース部分は、国産の和紙を貼り合わせて作成しています。和紙の質感や繊維を生かすため、貼り合わせは手作業で行いました。
今回選んだ和紙は、職人が1枚ずつ手漉きで制作しているため、同じ種類の紙でも少しずつ表情が異なります。その違いが、シリーズごとの個性になっています。
使用した和紙は、「楮紙(こうぞし)」という種類のもので、障子に使われることもある丈夫な紙です。断裁した部分の繊維が細長く、繊細に見えるのも特徴のひとつ。
『筆旅』の顔である表紙にも、日本の職人技が詰まっています。
再現の奥深さを知る「印刷」
紙を変え、色の濃度や彩度を調整し、何度も見本を出して試行錯誤。ほんの数%の色の差が、全体の印象をがらっと変えてしまいます。
熟練の印刷ディレクターと打ち合わせを重ねながら、妥協のないものづくりを……。うまくいかずスケジュールがおしてしまいましたが、自分たちが心から「良い」と感じるものをお届けしたいという気持ちを曲げず、最後までこだわった色味です。
手仕事の丁寧さに触れる「製作」
製作現場での作業だけでも、11工程あります。
ページの狂いなく正確かつ迅速につくるためには、「最新の機械を使った作業」と「伝統的な手作業」の融合が重要なのだそう。いずれにおいても求められるのは、職人たちの高度な技術です。
手仕事で行われる作業のひとつ「糊入れ」(ページを貼り合わせる作業)の様子です。
糊入れ時は、2冊分が縦に並んだ状態で作業が進められます。
まず、のりしろをつくる「繰り出し」を行います(写真上)。お札を広げるような作業ですが、素早く均等に広げられるようになるまでに5〜6年はかかるのだそう。
刷毛で均等に糊をつけ、貼り合わせます(写真下)。糊をつけすぎれば印刷面に影響してしまい、足りなければきちんと貼り付きません。糊の分量からつけ方に至るまで、職人の感覚が重要な作業です。
貼り合わせたらプレス機にかけ、その後ボール紙で1つずつはさみ、反ったり歪んだりするのを防ぎます。糊入れは、熟練の職人が行っても1時間にできるのが60〜80冊程度。その後断裁や表紙づけの工程を経て『筆旅』が完成します。
一つひとつの作業を自分たちの目で確認し、納得できるものをお届けしたい。
そんなわたしたちのこだわりを叶えてくれる各部門のプロたちの力があったからこそ、『筆旅』をつくることができました。
作家・花城祐子先生のこだわりや制作秘話も公開しています。下記のページよりぜひご覧ください。